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アダマスの最期

.18 2013 或る物語 comment(2) trackback(0)
喪服を着た女、現れ、語り始める。

さて、ここからは私のお話しを聞いて頂きましょう……
あれは――――――一体、どのくらい前のことでしたかしら…
或る人にとってみれば、一昔前、また或る人にとってみれば、昨日の事だと云うかも知れません
しかし、おおよその人々にとって、あれはきっと――――――大昔のこと


こうして、女は「ものがたり」を進めてゆく。
と或る小さな王国に住む娘、アダマスの「ものがたり」を。
孤児のアダマスに、天は決して慈悲の光を当ててはくれず、次から次へと辛い試練を課す。
やっと手に入れた仕合せかと思えた、同じ身の上の青年との恋も、この小さな王国を揺るがすほどの事件によって幕を閉じる。
青年は、王様の持つ世界で一番美しいダイヤモンド、“乙女の涙”を盗んだのだった。
アダマスの為に…

「お城に住む誰よりも、お前を綺麗にしてやるよ」

と云って……
青年は、もう二度と王様の牢屋からは出られないという。
嘆き悲しむアダマスは、満月の煌々と輝く夜、崖の上から荒波猛り狂う海に身を投げるのだった――――――

【完】

悲しくも美しい愛のものがたりを終えた喪服の女が、観客に向かって云う。

皆様、まことしやかに囁かれている、こんな噂をご存じかしら?
アダマスの魂が、今も尚、彷徨い続けている…という……
もう戻らぬ恋人の為に、喪服を着て身を投げたアダマス――――――
どうか、喪服の女を見かけた際には、お気をつけ遊ばせ…
だって、“乙女の涙”ほど、キラキラと美しく、そして危険なものは御座いませんでしょう?

と、喪服の女の手には、大粒のダイヤモンドが光る。

もうお気付きね?
そう、私の名前はアダマス――――――
私は、自分が持ち得る総てのものと引き換えに、これを手に入れたの
だって、あの人が私の為に命を懸けて王様から盗んだものですもの
これは、あの人の命そのもの――――――


悲しみに表情を歪ませる女。
と、次の刹那

という……展開を期待なさったでしょ?皆様?
あら、残念!


貧しいながらも愛に生きた悲劇のヒロイン、アダマスの姿は、観客の前から一気に消え去ってしまう。
其処には、悪魔のような女が居る。

美しいお話しかと思いきや、残念でした!
ちょっと角度を変えるだけで、こんなにも美しい愛の物語になるなんて、自分でも驚きだわ
でもね、皆様、愛なんて何の役にも立たないのよ
現に、私が愛した人達は、みんな私を遺して死んでしまったわ
私は、愛を信じない
私が手に入れたかったもの――――――そう、それは富と権力!
でも、あの男がしくじって牢屋にぶち込まれたのだから、計画はパァ
全く使えない男!!
ふふふ
そう、計画は失敗だったわ
では何故、今私の手に“乙女の涙”が在るんだと思う?


なんとこの女は、悪魔と契約を交わし、魂と引き換えに“乙女の涙”を手に入れたのだと云う。
冨と権力を手に入れる為に愛を忘れてしまったこの女は、もはや人に非ず

いいこと?
所詮、この社会は物質主義!
愛なんかよりダイヤモンドよ!!
綺麗事なんてもう沢山よ!
ヘソで茶が沸くわ!!


勝ち誇ったように高笑いをするアダマス。
その時、天が彼女に下すものとは――――――


(作:安慈影良)
***********************************

昨日まで、渋谷のSARAVAH東京で行われていた『Vagabontic Spooky NightⅡ』の中で、僕が演った寸劇のあらすじである。
ライヴハウスで演劇なんて、観客は求めていないのかも知れない。
しかし、僕は役者なのだ。
面倒臭いことに、「役を生きる(演じる)者(モノ)」だ。
演劇を観に来たわけでもない観客の前で、“役”を演じれば演じるほど、もしかしたら引かせてしまう可能性もある。
役を演じながら観客に絡もうものなら、共演者ですら何事かが起こったのかも、と心配してしまうほどだ。
“役”は“キャラ”と違って、重いと感じる人も多いのだろう。
でも、僕は“キャラ”を持っていない。
人々を一気にワッと沸かせる技を持っているわけでもない。
やはり、“役”を生きる(演じる)しか手段がないのだ。
分りにくく、厄介な人種である。
この『Vagabontic Spooky Night』では、そんな“分りにくい”自分にかなり落ち込むのである。
自分が今まで信じてやってきた芝居って何なんだろう……と。
起承転結を辿らなければならないので時間が掛かるし、下手すりゃ観客には寝られちゃうし……
やはり、ライヴハウスではやるべきではないのかも、と思った時もあったが、いやいやそんな境界線など自分次第で越えられる筈だと、奮い立たせ挑んだのが、今回だった。

結果は、やはり、よく分らない。

ただ、自分的にはやる意味があった。
このタイミングで舞台に立ち、起承転結の中で“役”を生きる意味があった。
僕が、今回、アダマスのものがたりの中で一番やりたかったことは、どんなに同情に値する可哀想な身の上であろうと、愛より富と権力を求め己を喪ってしまった者の最期である。

***********************************

高笑いが最高潮に達したアダマスが天を見上げてギョッとなる。

そんな、バカな……

次の瞬間、明かりカットアウト。
一気に闇。
爆発音が響きわたる。

***********************************

この爆発音が観客にどんなイメージを喚起させたかは判らないが、彼女の最期がハッピーではなかったことは伝わったと思う。
今、日本がやるべきことは、原発の稼働でもTPP参加でも国防軍を作ることでもない。
愛だよ愛!
ってことが云いたかっただけ。
とってもシンプルな事を、僕のやり方(面倒くさいやり方)でやらせて貰った。
どれ程の人達に伝わったかは判らない。
抱く感想や想いは、既に観客のものなのだから。
唄なら、ストレートでシンプルな言葉で「原発反対」「TPP反対」「憲法改正反対」と唄っても理屈っぽくならずに伝わるだろう。
芝居の場合、それを台詞に練り込んで、ある状況の中で“役”の人物がそれを吐くという回りくどい手段を取る。
途中で、観客の集中を途切れさせてしまったら、一番伝えたいことまで辿り着かずに観客を逃してしまう事にもなる。

役者でもない共演者に手伝ってもらい、やっとものがたりを紡いだ。
彼等の協力と理解なくしては、無理だった。
勿論、観客に伝わったかどうかは、判らない。
伝わらなければ、やる意味など無いのかも知れない。
そして、自分がやったものを、こんな風に説明するのもダサイな~と思ったが、選挙も近いので敢えて想いを明確にしておきたかった……

原爆を2発も落とされ更には原発で自爆。
世界で唯一の経験をしても尚、原発だ国防軍だと云っているこの国が今思い出すべきことは、金や軍事力より愛だよ、愛!ってこと。
夢想家と云われようが、構わない。
もう一度云っておこうっと。
愛だよ、愛!!


【メモ】
アダマス――――――ダイヤモンドの語源になったギリシャ語。「征服されざるもの」「不屈」などの意。

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comment

みな
いいじゃん!やって大成功!!素晴らしいよ!
客に絡むのもいいじゃん!
勇輔は役者だ!役者が私のショウで役者をやらなくてどうする!
いいんだよ!それで!
2013.07.18 20:39
たかこ
林さん、ちゃんと伝わっていますよ!
2013.07.18 20:56

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yoosque

Author:yoosque
林勇輔――――役者
1974年5月16日(木)、疳の蟲を身体いっぱいに抱え、この世に生まれ出ずる。
<幼年期>
蟲たちは、勇輔の故郷、讃岐の民間療法により体外に誘き出され駆除されたかに見えたが、未だ体内に巣食っている模様。
<少年期>
好き嫌いが多く、この世で食べられるものが少なかった。
<青年期>
中途半端な生き方を謳歌する。芝居に出逢う。
<壮年期に差し掛かる、現在>
2012年1月12日(13日の金曜日イヴ)、突然、“声溜め”を公開することを決めた。

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