都会の中の空気の在る処

.22 2012 ちょっとしたこと comment(6) trackback(0)
初めて足を踏み込んだ―――――

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新宿御苑。
この近くの劇場には、公演の為、しょっちゅう来ていた筈だが、いつも横目に通り過ぎるだけだった。
劇団の芝居に関わっていると、平等な筈の時間が不平等になる。
つまり、足らなくなる。
たまに時間が出来たとしても、睡眠に使ってしまう。
だから、一ヶ月もの間、劇場への道すがら此処の横を通っていようが、立ち寄る時間など無かったのだ。

しかし、実はとても気になっていた。

芝居本番中の或る日、劇団公演にしては珍しく、ソワレのみという日。
いつもより早めに家を出た。
何故か―――――その日こそは、新宿御苑に入ってみる為であった。
その為に、前日の終演後は呑みにも行かず、家に帰ってもPCの前に座ることもせず、日付が変わる前にベッドに飛び込んだ。
明日こそは、新宿御苑に入るのだ!
散歩して、木陰のベンチで読みかけの本を読むという贅沢な時間を過ごすのだ!!

次の日、僕の新宿御苑デビューをお祝いしてくれているかのように、快晴。
暑いくらいであった。
足取りは軽く、心は躍っていた。
カバンには、本。
門の10メートル程手前で足が止まる。

休・園・日

僕は視力が良い。
だから、見えてしまったのだ、無情なこの三文字が!
暫らくは動けずにいたが、やがて歩き出した。
固く閉ざされた門の方へ。
僕は視力が良い。
見えたのだ、門の向こうに人が居るのが!

“もしかして、全くの休園日ではないのかも知れない!!”

冷静になって考えると、どういう思考の流れ方なのか、我ながら不明である。
なんとか開けて貰えないだろうかと、鉄柵にしがみつき、門の向こうで掃除をしているおじさんにジッと眼差しを送ってみた。

“ね!ね!全くの休園日ってわけじゃないんだよね!!”
(㊟:勿論、心の中で唱えた言葉である。実際に掃除のおじさんに掛けた言葉ではない)

強く願ってみたが、無駄であった……
つまりは、楽屋入りまで、潰さなければならない時間が出来てしまったということだ。
一度家に帰るには時間が無さ過ぎ、映画を観るには中途半端。
覚悟を決め、近くのカフェに座り込み、本を開いた。
しかし、どうでもよい会話に大輪の花を咲かせている隣のサラリーマンの声がやかましく、すぐに本は閉じてしまった。
仕方ないので、彼らを観察することに気持ちを切り替えたのだった。

そんな、恋焦がれていた新宿御苑に、今日、やっと、足を踏み込んだのである!!
こんな別世界が、こんな近くに在ったなんて……
巨大な温室も在るようだが、入園した時間が遅すぎたようで、既に閉まっていた。
次回、入ることにしよう。
とりあえず、歩いてみる。
人工的な音が一切聴こえない。
みんな、穏やかな顔をしている。
気になる木があれば、木肌に触れ、撫でまわし、そして、暫らくの間ジッとする。
此処では、こんなこと、奇行の内には入らない。
見上げると、

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大量のマイナスイオンシャワーが降り注ぐ。

“ああ~、これで今夜は、お風呂に入らなくていいみたい”

或る木の下の様子が、変だと思い近づくと、

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おびただしい数のドングリ小僧が居た。

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薔薇も咲いていた。
僕が生まれた時、家の庭の薔薇が満開だったと、母が教えてくれた。
以来、僕は薔薇が好きだ。

こんな風景も在った。

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どうして、今まで此処へ来なかったのだろう。
此処の存在に気付いていたのに、どうして来なかったのだろう。
否、来られなかったのか?
休園日って……あれは、拒否されたのか?
いやいや、そんな筈はない。
あの日は、暑すぎた。
初めて足を踏み入れるには、今日みたいな日が好い。
最良のタイミングで、僕を迎え入れてくれたに違いない。

そんなことを想いながら、心地の良い時間を堪能していると、やがて、閉園時間を知らせるアナウンスが流れた。
しぶしぶ、ベンチから腰を上げ歩き出した。
かつて、一度しがみ付いたことのある門が見えてきた。
人工的な音が、段々と大きくなる。
険しい顔をした人たちが見える。

門を潜り抜け、その向こうに口を開いて待っている喧騒の中へ―――――


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JUNKO
『新宿御苑前駅』を何十回も利用しながら…私も新宿御苑のなかには足を踏み入れた事がありません。
この季節、少し自然にふれてみるのも良いものですね(^-^)

次回サンモールに行く際には、寄ってみたいと思います。(休園日は調べてから〜)

写真をみていたら、秋の散策に出掛けたくなりました。
2012.11.22 09:51
マミー
私も主人の事務所のお手伝いに行く度に素通りしていましたが
昨年、ついに足を踏み入れることが出来、暫し都会の喧騒を
忘れて優しい気持ちになることが出来ました!

その季節は春の桜の季節でしたから、秋の紅葉のこの季節には
又御苑の違う顔が拝見できるかもしれませんね!

秋の散策に私も出掛けてみたくなりました!
2012.11.22 19:01
ピヨ丸
私も新宿御苑が気になっていました
中に入ってしたいと思って時が過ぎていました 勇様も同じだったなんて 私も絶対に行動にうつします
2012.11.22 19:32
kn
素敵な写真たち…

最近、仕事で少しつらい思いをしていたのですが、救われました。
東京に来てからしっかり呼吸をしたことがなかったような…

この週末、出かけてみようかなと思います。
広い場所へ、深呼吸しに。
2012.11.22 22:10
kokoro
一番目の写真を見たとき、芝生+ドコモタワーで、明治神宮からの景色かと思いました。

明治神宮も北参道側から宝物殿の方に向かうと、人工な音が消えていって心の静寂が戻ってきます。
入園料も休園日もないのでおすすめです。
2012.11.23 23:19
cotidiano
どの写真もきれい!!!
静かな写真集のようです。
2012.11.25 10:19

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Author:yoosque
林勇輔――――役者
1974年5月16日(木)、疳の蟲を身体いっぱいに抱え、この世に生まれ出ずる。
<幼年期>
蟲たちは、勇輔の故郷、讃岐の民間療法により体外に誘き出され駆除されたかに見えたが、未だ体内に巣食っている模様。
<少年期>
好き嫌いが多く、この世で食べられるものが少なかった。
<青年期>
中途半端な生き方を謳歌する。芝居に出逢う。
<壮年期に差し掛かる、現在>
2012年1月12日(13日の金曜日イヴ)、突然、“声溜め”を公開することを決めた。

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